お知らせ
Vol.3『不思議な世界』。 島野です.
梅雨時期はアジサイのシーズン。梅雨の憂鬱な時節にブルーの清々しいアジサイを見ると癒されます。アジサイは、東京都港区、秋田市、神戸市、長崎市その他十数都市のシンボルに成っています。名古屋市千種区でジョギング中、アジサイの浮彫マンホールを発見。アジサイは鋳造とも縁が有るようです。アジサイは、多くの人々に愛されているようです。
アジサイと云えば、たぶん西洋紫陽花・手毬紫陽花をイメージしてしまいます。日本固有種のガクアジサイが中国をへて西欧に渡り品種改良され日本に逆輸入された園芸種が西洋紫陽花・手毬紫陽花です。
江戸時代長崎出島のオランダ商館医シーボルトが、アジサイを持ち帰り、著書の『日本植物誌』にアジサイを紹介したことがアジサイの西洋普及に一役かったとの説が有ります。シーボルトとアジサイには愛物語の言伝えが有ります。出島滞在時、美しい遊女「お滝さん」と恋に陥り結婚して「稲」と云う女子をもうけました。シーボルトは、ドイツ語発音でお滝さんを『オタクサ』と呼んでいたそうです。シーボルト事件により日本国外追放になり、帰国しました。帰国後も二人の愛は続き、「日々、お前とお稲の名を云う」との日本語手紙を送り、お滝さんは、煙草盆の蓋に肖像を描かせ「私を忘れないで」との手紙を添え送ったそうです。お滝さんへの思いが募り『日本植物誌』に、アジサイを『Hydrangea Otakusa』の学名で紹介しました。アジサイには、既に他の学名が有り採用されませんでしたが、学名に遊女の名使用しようとしたシーボルトは顰蹙をかったそうです。長崎では、今もアジサイを【オタクサ】と呼ぶ人もいるとか。
西洋紫陽花の花びらは、花弁ではなく愕辺です。愕辺に雌蕊は無く種が出来ません。愕辺は、昆虫寄せの役割をはたしていると云われています。西洋紫陽花は、主に挿木で繁殖させます。アジサイの細胞は、分化全能性(細胞が、根・茎・葉等の種々器官に分化し個体形成する潜在的能力)が高く容易に挿木で繁殖出来ます。動物の細胞は、受精卵を除き分化全能性はなく、大きく違います。
ガクアジサイの花の中央にある花は、雄蕊・雌蕊のある両性花で受粉し種をつくります。西洋紫陽花は、種を作らない、と誤解し、どのように交配し園芸種を作るのか不思議に思っていました。しかし西洋紫陽花も種を作る可能性が稀に有ります。西洋紫陽花の愕辺を全て取り去ると小さな正常花が陰にひそんでいます。花から花弁、雄蕊を取り去り、人工授粉をすれば、お好みの新園芸種を作る事ができます。受粉後種が出来るまで約5ヶ月を要するようです。私は、挿木をして挑戦中です。庭には自然に繁殖した新株も有ります。花を咲かせるまで2~3年を要します。どんな花を咲かせるか楽しみにしています。